すきなひと

ただの主婦でした。結婚25年で見つけてしまいました。

昔の恋⑤

店をやめるのは彼も賛成していた。バレたからだけど。私がやめる事を公にするとバイトから二人同時期にやめることに。1人は就職が決まり、1人はトリマーになる為にと。私は、私は理由は言えないけど。まぁ皆さん気付いてたけどね。長く勤めてたから3人の送別会をしてくださった。Y氏も参加してたけど不思議と泣くこともなく楽しかった。

この先2人はどうなっていくのだろう?

二十歳になりたての私はまだまだ彷徨っていた。

そこそこ貯金を持っていたので仕事はゆっくり探すつもりだったが知人の紹介でオープンしたての和食レストランにすぐ働き出した。

私の事を知らない人ばかりで居心地もよく安心して働けた。

Y氏とは週に一度のデートと真夜中の電話で続いていた。離れていると笑っていることが増えたことに気づいた。

辛い毎日が薄れていってる気がした。

Y氏との未来を夢見ていた私は少しずつY氏から離れていくことを考え始めた。

ただ私の自宅を知られている。約束してない夜にもY氏は車で来るようになった。嬉しいがだんだん怖いなぁと思うようになっていった。

いつものデートでやんわり会うのを控えようと提案してみた。回数を減らそうという感じで。

私はもう終わりにしたいと思っていた。

社会的立場がある人だし大人だから察してくれるとも思った。ところが!Y氏から放たれた言葉を今でも忘れない。

「一生つきまとったるからな‼︎」

なぜかごめんなさいを繰り返していた私。

けど離れる方法をその日からずっと考えるようになった。私たちの交際を知っている友人にある日ドライブに誘われた。紹介したい人がいると。

そこに現れたのが夫だった。

後悔のあと。

疲れていた私はすぐさま深い眠りに落ちた。

数時間後いつものように早朝に目覚め仕事に向かう準備と主婦仕事をこなした。

携帯は電源を入れないまま自宅に置いてでた。

泣く事もなく電車に揺られ出勤し、一日中仕事に没頭した。夜から違う仕事があるので一旦買い物と家族の食事を用意しに戻る。

携帯を横目で一瞬見て手には取らず再び仕事へ。23時前に帰宅した私は次の日の為に急いで寝なくてはいけない。お風呂につかりながら

このまま大丈夫かも。会えなくても生きていけるわ。慣れていけるわ。

頻繁に会ってたわけちがうし。

彼のいない職場も半年過ぎて慣れたし。

いなくて当たり前の日々に戻るだけ。

などと思えてきた。

丸一日触っていない携帯を手に取った。仕事関係のメールやLINEもチェックしていなかったから電源を入れてみた。

電源を入れると消したはずの見慣れたアドレスからのメールがあった。

早朝6時半に。「おはよう!また日程調整して連絡するからな」

その文章を見ただけで泣いてしまった。

離れたくない。

彼が好きだ。

彼と生きたい。

終わりにできない。終わらない。

「こないだはごめんなさい。めちゃくちゃな事言いました。わがまますぎました。反省しています。好きです。すぐ会いたい。」と送った。

「わかってる」

一言だけ返信をくれた。

もうこんなことはしないと誓う。

彼は言うだけじゃなく離婚に向けて動いてる。

1人になって私を受け入れようとしてくれているじゃないか。こんな病気持ちの細い私と向き合ってくれてる。感謝しないと。大事にしないと。

次に会ったらちゃんと謝ろう。

素直にずっと一緒にいたいと言おう。

不安はつきまとうけれど彼は私を信じてるといってくれた。私は約束を必ず守ってくれる度信頼度が増してるよと伝えた。 信じてみよう。

再び彼を登録した。

削除するなんてもうしない。

終わらなかった事に安堵して眠りについた。

衝動的に。

彼と抱き合った日、服を着てこう切り出した。

「話し合いの続きはどうなった?」

日にちを改めて話し合いの続きをすると報告貰ってたので2週間も経てば進展あると思い聞いてみた。

「なんか話し合いしようとしたら逃げられる。避けられてるんや。子供が起きてるし出来ない言うし寝てから話しよか?言うてるけど理由つけては話し合いの席についてくれへんからできてない。」

実際に別居生活に入ってるけど私はまだ彼のマンションに行っていない。私なりにけじめとしてはっきり離婚が確実なものと見届けるまで行かないと決めている。だから中間のホテルで会っている。

わたしが淡々と話しながら帰り支度をし出して彼は慌てていた。

「詰めが甘いねん。覚悟して家でたんやろ?私に相談なくマンション決めてきたのは離婚を決意したからやんな?」

「私は蒸発してもいい、あんたとならどこへでも付いて行くし生きていける。」

私は彼以外を失ってもかまわないと真剣に思っている。ただ準備期間は欲しいと一年後を目標に自宅をでるつもりにしていた。

とにかく私は働けるだけ働いている。家にいたくないのもあるけど、家にいてもお金にはならない。丸一日の休みを作らず掛け持ちして働いている。今の家族に渡す分と持ち出す分は自分で稼ぎたいのだ。

離婚が簡単ではないのはわかってる。

彼の離婚に向かう姿勢の甘さが苛つかせた。

よくある話ですよね。ほんとにバカ女です私は。気づいたら言ってしまっていた。

「もういいわ。携帯だして」

「何すんの?」そう言いながら私に渡す。

私のアドレスと番号を削除しようとしたら

「やめてくれ!!」と彼。

黙って自分の携帯から彼の目の前で彼の番号とアドレスを削除した。

もう止まらない。カバンと帽子を渡し、買っておいた朝ごはん用のパンの袋を持たせドアの方へ押した。淡々と穏やかな口調で「半年間楽しかったわ。夢見過ぎたわ。おしまいや。」

彼は動かない。悲しそうな顔してる。眉毛が下がってる。「連絡するからな、絶対メールするから、今日おかしいで?一緒に帰ろう、な?」

立ったまま向き合って彼に抱きついた。

「頼むし今日で終わりにして。切り捨てて。

待ってしまうねん。」

涙が止まらない。顔を覗き込み頭を撫でる彼。次の瞬間無言でドアを開けて彼を押し出した。そして終わった。ドアを開けようと私の名前を呼ぶ。トイレに入り泣いた。

しばらくして私もホテルをでた。

どうやって帰ったんだろう。

終わりにしてしまった後悔、彼と二度と会えない恐怖に震えていた。

だけどこうしなければいけないと思う自分もいた。電源を切って私は眠った。